大正12年9月30日

更新日:2023年09月30日

助役日誌

9月30日(日曜日)、同様に欠席する。

大磯警察署の日誌

9月30日(日曜日)晴

薬品の支給と無料診療の嘱託
前日、警察部に行き、請求し受領した各種薬品は、これを有効に使用するため、考慮した結果、その一部は当署に置き、佐藤衛生技手によって、従来のとおり無料治療をさせ、他は震災後に自発的に無料の診療に従事した、曽根田医院(高麗)、大槻医院(長者町)、杏雲堂分院(平塚)、寺田医院(平塚新宿)、松木医院(二宮)へ分配する。この薬品がある内は、困窮者に無料診療をされたいと伝えたところ、快諾を受けた。明日10月1日から実施することとなった。

<無料診療の掲示>
「曽根田医院(高麗)・大槻医院(長者町)・杏雲堂分院(平塚)・寺田医院(平塚新宿)・松木医院(二宮)
これらの医院は、当署の求めに応じて、お困りの方へ無料診療を実施するため、遠慮なく治療を受けること」

警備隊員の交代
平塚警備中隊は、明日10月1日に静岡に引揚げ、その交代として伊勢原町に駐屯中の中隊が来塚し、平塚町新宿の旭座を本部とする。また、伊勢原町の第二大隊は平塚町に移すこととなった。ただし、本部内の治安はほとんど回復しているため、少数ずつ引揚げていく予定であり、今回の引揚げはその最初となる。

応援員の交代
静岡県から派遣された応援員の巡査部長らは、再度、本日交代することとなった。同じ人数の応援員が到着するため、伊勢原・秦野両分署の応援員も引揚げ、帰県させた。

貸座敷等の開業方針について
貸座敷・料理店・芸娼妓・その他の花柳営業者の開業方針については、以前、各組合に対して指示したため、その後、いずれも遠慮して開業する者はなかったが、管内の秩序が回復してきたため、営業者をこのままにしていては、生活上、大きな影響が出ることを考慮し、次の方針によって開業するよう、午後3時から各営業代表者を招致し、指示した。

<開業方針>
1)芸妓・料理店・飲食店は、営業を開始するにあたっては、次の事項を遵守することを条件に、明日10月1日から開業しても差し支えない。

  1. 芸妓は就業前に健康診断を受け、診断書を添付し届出た後、就業すること。
  2. 歌舞音曲は絶対にしないこと。
  3. 人目を引く扮装、または化粧して道路を通行しないこと。
  4. 街路から見える場所で遊興しないこと。
  5. 酒は客1人につき3合以上は出さないこと。
  6. 午後11時以降は、客へ酒食を出さないこと。

2)貸座敷の営業は、その設備が完成次第、次の条件を遵守すれば、開業しても差し支えない。

  1. 従来の回し部屋制度は関西地方と同じく2時間制度とし、1時間の料金で遊興させること。
  2. 酒は1人につき3合以内を限度とすること。
  3. 当分、娼妓の疾病については、全ての費用を経営者が負担し、当署指定の医師の治療を受けさせること。

この方針の内、娼妓の時間制度の変更は、以前からの理想をこの機会に実現しようとするものである。

自警団設立の許可
以前から設置方法を説明した各町村の中で、大磯町北本町、国府村寺坂及び生沢の地区から、自警団設置の願い出があり、直ちに許可した。

解説

注意

記事をお読みいただく上での注意点は、大正12年9月1日の記事にまとめましたので、ご覧ください。

小見助役は、この日も自宅の復旧作業にあたっています。

警察署では医薬品の支給があり、引き続き、困窮者に対して無料診療を実施する体制が整いました。警備隊員や応援員の交代もあり、少しずつ状況が回復している様子がわかりますが、警察署員の応援員は同数の人員交代であること、予断の許さない状況とも言えます。

9月16日の記述にあるように、現在でいう風俗店の営業は、震災以来、中止されていました。秩序の回復を理由に、10月1日から条件付きの営業再開が認められました。

この記事に関するお問い合わせ先

教育委員会 教育部 生涯学習課 郷土資料館
〒255-0005
神奈川県中郡大磯町西小磯446-1
電話番号:0463-61-4700
ファックス:0463-61-4660
メールフォームによるお問い合わせ