大正13年12月16日

更新日:2024年11月12日

12月16日(火曜日)、午前7時出勤。

税務署移転の件について大蔵大臣並びに税務監督局長へ提出する陳情書の本書を作成した。午前9時発の列車にて三宅悌吉外ほか数名が出発した。遅れて佐藤書記が町保管の国庫債券を農工銀行本店へ預けるために出張した。

本日、町会議員渡辺氏ほか数名が関東銀行の件について、藤沢本店並びに県庁へ出張された。

午後0時39分、所得営業税の件で吾妻村役場へ出張し、杉崎村長と面会し、午後3時頃に役場へ戻った。

午後5時頃に退庁した。

 

陳情書について

神奈川県中郡大磯町にある大磯税務署の管轄区域は、これまで中郡一円であったが、税務署管轄改正の結果、厚木税務署を廃し、大磯税務署の管轄区域を中・愛甲・津久井の3郡に拡大するとのことでした。しかし、聞くところ、愛甲郡は、管轄区域のほぼ中央にあり、これまで厚木税務署の管轄であったため、大磯ではなく厚木への移転を陳情したいと申し出ているそうです。

しかし、大磯町は、東海道の宿駅であり汽車、自動車の便があります。また、現在、鉄道の電化を行おうと考えております。交通の利便性を考えますと、大磯町が適地かと思います。ただ、大磯税務署は、元郡役所で取り扱う徴税事務を分離し、大蔵省の直属となりましたが、庁舎にふさわしい適当な建物がなく民家を借り入れて事務を行っていました。執務上の不便はだけでなく、住民並びに関係官庁の不便が多大であったため、新しい庁舎を建設しました。大磯税務署は僅かに修繕費にもならないほどの使用料をいただき、利用していただいている次第です。もし、管轄区域の拡大に伴い、建物が足りず狭いようでしたら、増築工事を検討します。

何度も申しますが、大磯は、交通の便が良いばかりでなく、気候も良く、税務署員の健康のためにも良いと思います。現在の庁舎に対する使いやすさもありますので、この際いずれから移転を計画することがあっても、ご採用されなきように陳情します。

大正13年12月15日 神奈川県中郡大磯町長 藤田文次郎

大蔵大臣 濱口雄幸宛て・東京税務監督局長 勝正憲宛て 各1通ずつ

 

建物払い下げの件に関する申請

この度、税務署管轄の改正の結果、厚木税務署を廃し、大磯町所在の大磯税務署は、その管轄区域を拡張されるとのことでした。これにより、庁舎が狭いと聞いております。つきましては、元厚木税務署であった庁舎及び官舎は、不用になると聞いておりますので、特別のご詮議のうえ、その建物を相当の価格で大磯町に払い下げていただだきたく、直ちに増設し、1つは庁舎に、1つは官舎に充てる意向です。なにとぞご採用くださいますよう、申請いたします。

大正13年12月16日 神奈川県中郡大磯町長 藤田文次郎

大蔵大臣・東京税務監督局長へ各1通ずつ提出

解説

今日は、昨日の税務主務省の事前了承を得て、税務署移転問題の陳情書を三宅悌吉らが持参し、大蔵大臣濱口雄幸並びに東京税務監督局長勝正憲へ各1通ずつ提出したようです。陳述書の内容から、いかに大磯が適地であるかを訴えていることが分かります。また、建物払い下げの件に関する申請書をみると、大磯税務署の管轄区域拡大に伴い、現在の税務署が狭いことを懸念し、不用になるであろう厚木税務署の払い下げも希望していることが分かります。

また、関東銀行の件で数名が藤沢支店と県庁へ出張したようです。休業に関する情報を得るために向かったものと思われます。

参考

鈴木昇『大磯の今昔』9、p130~133

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