100年前の大磯 関東大震災特集3 大正関東地震の発生メカニズム

更新日:2023年11月03日

関東大震災特集3回目です。今回は、地震が発生したメカニズムについて考えます。

関東大震災という言葉は、地震災害を表す名称で、地震自体を表す名称は「大正関東地震」と言います。この大正関東地震がどのような地震だったのか、助役日誌の記述から見てみましょう。

大正12年9月1日の助役日誌の記事

「正午12時頃までは、天候は晴れて穏やかだったが、突然震動が起こり、続いて未曾有の大地震となり、小さい津波を起こし、すぐに異常な引き潮を起こした。同時に全町に家屋の倒壊があった。特に停車場付近が最も激しく、町役場の小使室を倒し、数分して一時沈静した。」
大正12年9月1日

この文章から、次のことがわかります。

  1. 小見助役は、非常に冷静かつ敏感で、現在の緊急地震速報の理論上の裏付になっている、弱い揺れのP波(初期微動)とP波よりも速度が遅く強い揺れのS波(主要動)を感じ取っている。
  2. 小さな津波がきて、異常な引き潮を起こした。しかし、相模湾全体を襲った大津波に、大磯は襲われなかった。
  3. 家屋の倒壊が全町に及んだ。しかし、火災は、発生しなかった。
  4. 大磯駅付近の被害が大きかった。

震源はどこか?

現在、気象庁によると、この地震は、大正12年9月1日11時58分に発生、震源は神奈川県西部の東経139度8.1分、北緯35度19.8分(小田原市の北10キロメートルの陸上)、深さ23キロメートル、地震の規模を表すマグニチュードは7.9、地震の揺れは、大磯では所により現在の震度階で7であったと認識されています。

そして、5分後の12時3分に最初の震源より南東の相模湾上でマグニチュード7.3の余震が、1日置いて9月2日11時46分には、房総半島の南の海上でマグニチュード7.3の余震が起こりました。

これらの巨大な揺れは、太平洋から日本列島に向かって移動しているプレートが、日本列島が乗っているプレートを押して生じる岩盤の破壊によって、発生したとされています。相模湾と東京湾を含む大きな岩盤が動いて、断層を作りました。

このように、大正関東地震のような地震(海溝型地震)は、現在はプレートの動きで理解されています。しかし、大正12年当時、断層を生じるエネルギーがどこから供給されるかは、まだわかっていませんでした。ある特定の岩盤は、一定の周期で動くと理解されていたのです。

今のように相模湾で太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレート、ユーラシアプレートが、太平洋側から日本列島を押していることがわかったのは、1970年代のことでした。1960年代から海底の地形探査が盛んに行われ、その結果、海底が動いていることがわかりました。

津波は発生したのか?

大正関東地震は海溝型地震ですので、津波が発生する地震です。しかし、この時、大磯には大きな津波が来ませんでした。なぜでしょうか。

実際に、この地震では津波が発生し、鎌倉(由比ガ浜)や熱海の方が被害を受けています。大磯の場合は、津波が走った方向や、大磯の周辺地域が2メートルほど隆起したことなどが理由となって、津波の被害を受けなかったと言われています。日誌にも潮が引いたという表現が出てきますが、これは海岸が隆起したことによって、そのように見えたもので、引き潮の後に海水が押し寄せることはありませんでした。

大正関東地震では、津波の被害を受けなかった大磯。しかし、この地震の前、元禄16(1703)年に発生した元禄地震では、地震の規模が大正の関東地震と同じレベルであり、同じ断層が動いたのにもかかわらず、大磯では多くの漁船と300石の船(45トンクラスの船)が流され、住民が山に避難しという記録があります(「元禄地震 報告書」2013年3月内閣府(防災担当))。

単純に大磯には、津波が来ないと判断するのは危険です。

地震と火災

大正関東地震は、関東大震火災という表現もある通り、特に東京と横浜で大火が発生し、多くの人が犠牲になりました。大磯で火災が発生しなかったことは、不幸中の幸いと言えます。

当日9月1日は、台風が日本海にあり、大磯では早朝大雨が降って、農家の多くが作業をやめて休息日にあて、早く昼食をとっていたという状況も幸いしました。しかし、住民の全世帯が農家ではありません。大磯の町中で火事が出なかったのは、初期の対応が良かったことも理由にあげられます。実際に、9月1日の警察署の日誌には、火災に対する警戒を呼び掛ける警察官の行動が記されています。

次回は11月10日(金曜日)に更新します。大磯町の中でも国府地区の被害をご紹介します。

参考

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