大正12年5月8日

更新日:2023年05月08日

5月8日(火曜日)、午前8時20分出勤。

長島・加藤の両書記並びに中西巡視の3名は、梅田雇と共に北下町妙輪寺ヘ腸チフス予防注射のため出張した。

小田原電気会社が馬入川畔に火力発電所を新設し、その地鎮祭を執行するとのことで、町会議員一同と町長・助役に参列の案内があった。藤田町長と町会議員は随意参列することにした。

午後、長島書記が帰場し、小見雇が代わって妙輪寺注射場へ出張した。本日は、大安亭においても腸チフス注射を執行した。

午後4時10分退庁。

本日、藤田町長は出勤しなかった。

解説

腸チフスの予防接種は2日目。今日は寺院や寄席を会場にしています。

日誌の記述を見ると、人々を集める場所として、公共施設ではない寺院や寄席・劇場がよく利用されています。前日5月7日の記述からは、鴫立庵も使用されていたことがわかります。なお、妙輪寺は北下町に現存する日蓮宗の寺院、大安亭(だいやすてい)は、かつて南本町の路地裏にあった寄席です。

また、馬入川畔に火力発電所の建設を計画しているという小田原電気会社とは、正しくは小田原電灯会社と言ったようで、小田原電気鉄道株式会社(現在の箱根登山鉄道の前身)が発電する電力を利用して地域に電気を送る会社でした。この会社は、1900年(明治33年)に設立されました(『小田原市史』通史編近現代、p.336)。

1888年(明治21年)に国府津から箱根湯本間(小田原経由)で開業した小田原馬車鉄道は、1900年(明治33年)から電化されて小田原電気鉄道となり、大正時代に入るとさらに小田原・大磯・平塚の地域で手広く電力事業(小田原電灯会社)を展開するようになっていました。この建設計画も、おそらくその一環だったのでしょう。

しかし会社は、この後起きる関東大震災で大打撃を受けてしまいます。その後の経緯を見ても、この計画は、実現しなかったものと思われます。

参考

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