大正10年6月9日

更新日:2021年06月09日

6月9日(木曜日)、午前8時10分出勤。

栢木書記は、私用のため欠席。

普通事務に従事した。

午後0時頃から、東京中野無線電信隊が町に宿泊。同4時頃から小学校運動場において、無線電信技術の試験を、大磯と中野間で行った。

足柄下郡真鶴村において真性コレラが発生したとのこと。警戒のため、警察署に区長・衛生委員・衛生組長を召集し、午後1時から、町役場と警察署との主催で講話会を開催した。

今日は、漏刻鐘鼓の宣伝ビラを各戸に配布した。

町役場の設計図を8枚、三浦郡西浦村長に貸与した。この件は、井上郡視学に委ねた。

午後4時30分退庁。

解説

今日は、さまざまな出来事が書かれています。

まず、東京中野から無線電信隊が来て、小学校の校庭で無線の試験をしました。現在は、通信技術の発達で、国内外はもとより宇宙空間ともビデオ通話ができますが、100年前の当時、電波で「モールス信号」(いわゆるトン・ツー)を送受信する「無線電信」は、最先端の無線通信技術でした。

明治29年(1896年)に、当時の逓信省で始められた無線通信の技術は徐々に進歩し、ちょうどこの頃、それまでの混信を起こしやすい送信機に替わる新しい方式が開発されたり、小型化を図る研究が進められたりしていました。詳細は書かれていないのでわかりませんが、大磯で行われた試験も、そのような技術開発に関わるものだったのかもしれません。無線の多くは軍事用として開発され、利用されているものでしたが、官庁と船舶のみだった無線免許を、法人や個人にも許可するようになったのがこの頃です。それにより、2年後の関東大震災(大正12年・1923年)の時にいち早く情報が伝わり、4年後の大正14年(1925年)には、東京・大阪・名古屋で電波によるラジオ放送が始まりました。

もう一つの大きな出来事は、「真性コレラ」の発生です。コレラは経口感染症の一つで、19世紀の初めに世界的流行が起きて以来、現在も世界では流行地が存在します。当時すでに、コレラ菌に汚染された水と、主に魚貝類から感染することがわかっていましたので、公衆衛生の監督を担っていた警察署が主導して、警戒のための講話会が開かれたようです。

さらに今日は、7日に区長たちに依頼した「漏刻鐘鼓」(ろうこくしょうこ・時の記念日)用のビラを配布しています。詳しくは、6月7日の記事をご覧ください。

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