大正10年3月9日
3月9日(水曜日)、午前8時25分出勤。
本日は加藤収入役が出勤したので留守中の収支を計算し、引き渡した。
午後1時から鰤敷網の歩合問題について町会議員一同を役場へ召集したが、出席議員が少数だったため流会となった。神奈川県水産課長の仙川満多雄氏が出張されていたが、むなしく帰庁された。
警察署長が、衛生芝居の興行について来場した。
午後4時50分退庁。
解説
収入事務は、本来助役の仕事ではなく、収入役が不在の時に代理として行っていました。収入役が出勤したので、収支を精算・引継ぎをしています。
鰤(ぶり)敷網の歩合問題とは、漁業組合から町に支払われていた分配金に関する件です。
当時、大磯沖で定置網のブリ漁をしていた鰤敷網組合は、漁業権を持つ漁業組合に多額の場所代を払っていました。そして漁業組合は、その収益金を町と西小磯地区との三者間で決まった割合で分配していました。詳しくは、大正10年2月2日の豆知識をご覧ください。しかし、鰤敷網組合が前年12月に新会社を立ち上げ、支払う金額を変更したために、分配の割合(歩合)を変えざるを得なくなりました。西小磯地区は何とか了承し決着しましたが、町は議員たちの意見がまとまりませんでした。今では考えられませんが、この日も結局、議員たちが役場へ集まらなかったようです。県水産課長に無駄足を踏ませたことになり、小見助役は困ったに違いありません。
警察署長が相談に来た衛生芝居の興行とは、人々に衛生に関する知識を持ってもらうために行われた芝居興行のことです。当時、このような衛生に関する業務は警察が担っていました。世界中で猛威を振るったスペイン風邪(新型インフルエンザ)の流行はまだ収まりきらず、チフスやコレラなどの感染症も依然として身近な脅威であり、防疫対策は人々にとって、官民挙げて取り組む大きな課題の一つでした。
更新日:2021年03月09日