大正9年11月3日

更新日:2020年11月03日

11月3日(水曜日)、 午前8時30分出勤。

本日、南下町山下と長者町の腸チフス患者1名ずつを、隔離舎へ入院させた。

戸田技術員と梅田検査員は、西小磯方面へ出張。

明日4日午前7時26分、皇太子殿下が大磯駅を御通過とのこと、連絡を受けた。

本日、大字西小磯町屋から本郷に通じる指定里道の橋梁の修繕が落成したので、町役場から次のとおり支出した。
高麗石20馬力:208円
橋梁:20円50銭
石工・土工手間:108円15銭

午後2時10分、藤田町長は警察署へ衛生展覧会の件で出張された。3時50分に帰庁。

本日県税を完納した。

午後4時10分退庁。

解説

腸チフス患者が続けて発生しています。これ以上病気が拡がらないことを願う人々の気持ちは、当時も今もきっと同じだったと思います。

西小磯の橋梁工事が終わり、代金を業者に支払いました。「高麗石」とは、おそらく大磯の高麗山から切り出された石のことだと考えられます。現在も石切場の後が残っています。また「馬力」とは、「馬が曳く荷車」のことで、20馬力は荷車20台分という意味でしょう。この橋梁工事については、前月10日に石垣を築くことが決められましたが、この記事から、高麗の石が使われた可能性があります。

今日は、午後に町長が衛生展覧会の件で警察署へ出かけています。衛生展覧会とは、1887年(明治20年)に東京築地で開催された「衛生参考品展覧会」に始まり昭和40年頃まで全国で開催されていた、衛生思想啓発のための展覧会のことです。伝染病等から身を守る予防知識を普及させるのが本来の目的で、結核予防会や赤十字社が医学的な展示をしましたが、その一方で蝋人形や人体模型などを使った見世物的な展示も多く、大変人気があったようです。さらに、感染拡大に伴う世情の混乱を防ぐ治安維持という大義名分もあったため、警察署が主催することが多かったとのこと。町長が出張したのは、そういう理由があったためと思われます。

「県税を完納した」というのは、当時は国税・地方税の徴収が市町村に委託されていたため、記録された事柄です。

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