大正14年7月1日
7月1日(水曜日)、午前7時40分出勤。
昨日、狂犬が現れたので撲殺したとのこと。被害者が数人出た。
午前10時頃、鳶職の長岡常吉が来場し、海水浴場の建物とその他に関する請負人の件で、町長に面会した。
本日、裁判所へ毎月送付する届書の索引を作成した。
本日は、高来神社の祭典のため、例年通り区長及び氏子総代を町役場に召集した。宮代町長立会の上、年番の引継ぎとその他の件を協議した。
本日、火葬場敷地の土留コンクリートを140円で鈴木瀧三郎と契約した。
午後5時半頃、海水浴場委員の宮代師子氏と共に警察署に行き、高野沢部長と面会した。海水浴場開きの余興寄附金について種々訊問があった。帰場の上、町長に報告した。
午後6時に退庁した。
解説
7月に入り、例年通り海水浴客や避暑客に対応する準備が本格的になってきました。大震災から2年経ち、町は海水浴場の復旧を進めてきましたが、今日は、海岸に設置する建物の件で、職人と町長が面会しています。一方で、7月15日の高来神社の祭典(御船祭)の準備もしているようです。
その他にも、海水浴場開きで余興を行うため、小見助役は担当議員と共に警察署に赴いています。寄付金を集めることについて色々聞かれているようですので、何か役割を担っていたのかもしれません。
また今日は、狂犬を撲殺したという話題が書かれています。現在日本国内では、犬の登録と予防注射の徹底などで狂犬病は撲滅され、発生はありません。しかし、昔は野犬が多く、狂犬病の大流行が全国各地で度々起こり、死に至る病として大変恐れられていました。そこで、大正11(1922)年に家畜伝染病予防法が施行され、狂犬病を発症した犬や家畜は殺処分し、野犬の取り締まりを厳しくしました。大正7(1918)年に神奈川県で始まった集団予防接種も普及して、徐々に狂犬病は少なくなっていきました。しかし、関東大震災の混乱で野犬が再び増加し、流行が再燃し始めたのがこの頃です。狂犬病は、人だけでなく猫や家畜にも伝染します。当時生活に欠かせなかった牛馬を守るためにも、殺処分はやむを得ない行為だったのでしょう。
更新日:2025年06月04日