大正13年2月18日

更新日:2024年02月18日

2月18日(月曜日)、午前8時50分出勤。

本日より定期種痘と、臨時を兼ねて50歳以下の一般へ、種痘を実施することとなった。本日は高麗・山王町へ主任書記が出張した。

長島書記は病気で欠席。

西小磯東区長・西区長及び役員が立会い、敷地境界の参考のため、役場の地図と巻尺を貸与した。午前10時半頃、藤田町長が出勤早々、西小磯の境界地について、示談になったことを報告した。

午後2時40分、町長は山王町と高麗種痘所を参観した。その後、帰場せずに帰宅された。

小生は午後4時10分退庁。

解説

この日から、天然痘の予防接種が始まりました。子どもの時に接種を義務づけた定期接種と同時に、臨時接種も実施したことから、この時期に流行またはその兆しがあったと思われます。

西小磯の敷地境界について、2月16日に示談となったことを、小見助役は町長に報告しています。現在では、土地家屋調査士や法務局などに相談しますが、この当時は町長や小見助役たち町職員、区長たちが間に入り、気苦労だったと思います。

コラム:天然痘

天然痘は紀元前より、感染力が非常に強く、死に至る疫病として恐れられてきました。天然痘ウィルスを病原菌とする感染症で、飛沫や接触で感染し、致死率は20~50%、敗血症や気管支肺炎、脳炎などの合併症を起こし、治癒後も顔面に痘痕が残ることがありました。

日本では1909年(明治42)に「種痘法」が制定され、定期種痘及び臨時種痘の実施が市町村に義務付けられました。また、保護者に対しても種痘を受けさせる義務を負わせています。

<定期種痘>
第1期・・・出生より6か月以内、第2期・・・数え年10歳の時、の2回接種の義務。

<臨時種痘>
天然痘予防のために必要な時、種痘接種対象者と接種期日を地方の長が判断して実施。

その後、順次、3回の定期接種、集団接種の廃止、種痘接種の廃止等の法改正が行われています。

世界保健機関(WHO)は、「世界天然痘根絶計画」を行い、1980年(昭和55)世界根絶宣言をしました。現在では、唯一根絶された感染症と言われています。

大磯の情報として、南下町に熊野神社があります。境内には天保10年(1839)に建立された 「疱瘡神供養塔」の石仏があります。疱瘡神とは、恐ろしい天然痘をまき散らす悪霊の神のことで、地元では疱瘡婆(ほうそうばばあ)と呼んでいます。

石像を見ると、手に払子(ほっす)のようなものを持ち、髪を振り乱しながら何かを払いのけるようなしぐさが、浮彫で表現されています。地元の方のお話によると、感染力の強い麻疹や疱瘡除けとして信仰された「麦殿大明神」と考えられるそうです。

人々は皆、この石像に向かって、疱瘡神が暴れないよう、手を合わせていたのだと思います。

参考

この記事に関するお問い合わせ先

教育委員会 教育部 生涯学習課 郷土資料館
〒255-0005
神奈川県中郡大磯町西小磯446-1
電話番号:0463-61-4700
ファックス:0463-61-4660
メールフォームによるお問い合わせ