大正12年4月13日

更新日:2023年04月13日

4月13日(金曜日)、午前8時30分出勤。

戸籍謄抄本に従事する。

午後より渡辺書記が私用で二宮に行くため早退した。

学務委員会を召集。出席者は三宅・奥山・斎藤校長・藤田町長。いろいろ協議の結果、増築の件は具体的な案が無く、電架支柱の件を決定する。午後4時30分より小生も参加した。午後6時過ぎ帰宅する。

解説

学務委員会が召集され、懸案だった小学校増築の件などについて協議が行われました。ただ、良案は出なかったようです。「電架支柱」とは電信柱のことだと思われます。

コラム:当時論争となっていた「地租委譲」

この日の日誌には、「本県町村長会議地租委譲を決議」と書かれた新聞記事の切り抜きが挟み込まれています。

地租委譲とは、従来国税であった土地税(地租)を、地方税に切り替える政策を指し、地租が地方税になることによって、府県や市町村は財源を増やすことができます。なぜ、地租委譲が議論されるようになったかについては、地方の財政難を克服するという目的だけでなく、政友会の選挙対策がありました。

地租委譲を進めていた政友会は、当時、加藤友三郎内閣(加藤友三郎は海軍出身者で政党人ではありません)で与党の立ち位置にありましたが、地租委譲を実現することで、地方からより一層の支持を得て、衆議院議員総選挙で有利になることを考えていました。地租委譲には、野党勢力のみならず、政友会内からも反対の声がありましたが、政友会総裁の高橋是清らは審議を進めました。そして、新聞記事の切り抜きが示すように、神奈川県の町村長たちも、地租委譲を希望していたことがわかります。

なお、関東大震災の発生で審議が中断されたことなどもあり、地租委譲は実現しませんでした。

参考

升味準之輔『日本政党史論5』(東京大学出版会、1979年)

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