大正12年2月8日

更新日:2023年02月08日

2月8日(木曜日)、午前9時10分出勤。

本日も大雪のため、遅刻した。

加藤書記・梅田検査員の両氏は、本日、相模漁業株式会社の大漁祈祷をするため道了薩埵に参詣された。

昨7日午前7時17分、伊達宗陳侯が薨去された。本日、新聞紙上に掲載があった。悔状を呈上した。

昨夜の吹雪の際、旋風のためか、第四部消防器具置き場が背後の池の中に吹き飛ばされ、倒壊した。このことを、各議員に通知した。

本日の大雪1尺余り、在郷軍人分会及び青年支団が道路の雪かきを行った。奥山分会長が指揮した。

普通事務に従事。

午前11時頃、長島書記と共に第四部消防小屋倒潰の現場を踏査した。

午後4時10分退庁。

解説

昨夜からの雪は、一夜明けても降り続き、積雪が「1尺あまり」、約30cm以上積もり、在郷軍人会や青年団が、道路の雪かきをしています。 背後の池に吹き飛ばされたという消防小屋は、町内消防団が使用する器具類などを保管していた小屋の事と思われます。「旋風(せんぷう)」とは「つむじ風」のこと。かなりの強風を伴う吹雪だったことがうかがえます。

小見助役は、西小磯の自宅から徒歩で通勤していたと思われますので、前日の帰宅もこの日の出勤も大変だったことでしょう。

さらに驚くことに、この悪天候の中、書記らが大漁祈願に出かけています。100年前の当時、大磯の漁業はブリの定置網漁に力を入れていましたが、この頃は不漁が続いていたとの記録がありますので、ご祈祷することを決めたのでしょう。ちなみに、祈りが届いたのでしょうか、この年の漁獲高は前年に比べ倍増しました。

参詣した「道了薩埵(どうりょうさった)」は、大雄山最乗寺(南足柄市)の守護神となった室町時代の曹洞宗僧侶・妙覚道了のことです。彼は修験者として修業をしていましたが、了庵慧明禅師の弟子となり、1394年(応永元年)禅師が現在の地に最乗寺を開山しようとした時、怪力をもって造営に協力したと言われています。そして禅師が亡くなると、天狗に化身して守護神になったという伝説があり、境内には多くの天狗の像があり、天狗が履いているという高下駄が奉納されています。

また、悔み状を呈上した伊達宗陳(だて・むねのぶ)は、宇和島伊達家の当主。侯爵で貴族院議員、宮中顧問官などを務めた人物です。西小磯・八坂神社の西側に別荘を所有していました。

参考

ブリの漁獲高:『大磯町史』7、p.422

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