大正11年6月8日
6月8日(木曜日)、欠勤。
解説
引続き、小見助役は忌引きのため欠勤です。
豆知識~腸チフスについて~
小見助役の妻が命を落とす原因となった腸チフス。腸チフスはチフス菌という細菌によって引き起こされる病気で、現在は抗生物質によって治療することができるため、ほとんど怖い病気ではなくなりました。
腸チフスは、チフス菌に汚染された水や食べ物を通して感染し、感染すると高熱や頭痛、下痢を引き起こし、100年前の当時は、治療しなかった場合、約60パーセントが死亡したと言われています。感染を予防するためには、食事前や調理者の手洗い、水の煮沸、加熱調理が必要で、上下水道の衛生管理が重要でした。
100年前の当時はすでにワクチンが開発され、予防接種が実施されていましたし、腸チフスの患者が快復して隔離舎から退院したという記述も、助役日誌に見られますので、感染したからと言って、必ずしも亡くなるという病気ではなかったようです。しかし、患者の発生がしばしば見られることから、当時の衛生状態では、まだまだ怖い病気であったと考えられます。
当時、施行されていた伝染病予防法に指定されていた伝染病の中には、痘瘡など撲滅できたとされる感染症もあります。この100年で、衛生状態や治療方法が飛躍的に進歩したことを実感すると共に、新型コロナウイルス感染症のような新しい感染症の存在を思ったとき、私たちが過去から学ぶことも多くあるように感じます。
参考文献
- 鈴木昇『大磯の今昔』(九)
- ジェニファー・ライト『世界史を変えた13の病』原書房、2018年
更新日:2022年06月08日