大正10年2月3日

2月3日（木曜日）、午前8時35分出勤。

本日、町長は平塚町において開催される町村長会に出席するため、出勤しない。

椎野郁氏が、中郡長の呼び出しを受けて郡役所へ行った。しかし、郡長が横浜へ出かけて留守であったため、池田郡書記と面談したが要領を得ず、むなしく郡役所を出て、大橋宇左衛門氏を訪問すると言って、そのまま郡役所へは戻らなかった。

今日は朝から大雪。西小磯地区の総代と区長らが役場に参集して、椎野氏が挨拶に来るのを待っていたが要領を得ず、むなしく帰宅していった。時刻は午後5時になっていた。

長島書記は東小磯境の西小磯里道拡張のため、道路巾の調査に出張した。

午後4時頃、池田郡書記に面会して、5時頃退庁。

椎野郁は、国府津在住の漁業者で、西小磯沖で小台網というやや小型の定置網漁を行っていました。この網の所有者は西小磯地区の住民たちで、椎野は使用料を払っていたようです。しかし経営が悪化した上に、昨年11月頃に出した漁業権の継続申請がうまくいかず、西小磯地区との関係も悪くなっていたようです。

椎野が訪問すると言った大橋宇左衛門は、前年暮れに大磯鰤敷網組合と合併した丸越漁場の主任でしたが、新会社・相模漁業株式会社設立時に専務取締役になった人物です。こののち、椎野から依頼を受けたのか、西小磯地区との交渉で代理人を務めています。

状況の変化で影響を受ける西小磯の関係者らは、年明けから椎野と連絡が取れずにいました。郡役所に来ると聞いて町役場にも挨拶に寄るのではと思ったのでしょう。大雪にもかかわらず集まってきましたが、結局待ちぼうけとなってしまったようです。小見助役も、きっと困ったことでしょう。