大正10年10月7日
10月7日(金曜日)、午前7時30分出勤。
今日も収入事務を取り扱った。
午前8時から午後4時までの間、西小磯の床屋においてチフスの予防注射を実施した。長島衛生主任、中西巡視、加藤書記と、警察医の佐藤和三郎、大槻医師らが出張した。本日の注射は、本県から防疫官が出張してきている。午後3時半頃、小生も注射をした。
午後4時、会場を閉鎖した。
解説
町内で、感染症の腸チフスが広まる兆候があったのでしょうか。今回の予防接種は通常とは異なり、役場担当者の他に、県の防疫官や警察医たちが参加したり、小見助役自身も接種を受けたりしています。
免疫学の研究が進んだ第一次世界大戦後、当時の国立伝染病研究所で開発された腸チフスワクチンは、大正の初め頃からその安全性と効果が広く認知されて接種が広がりました。日誌の中でも、しばしば「予防接種を施行した」と記録されています。
当時の接種会場は、寺院など人を集めやすい場所が選ばれていますが、この日の接種会場は「西小磯の床屋(とこや)」。この場所は現在の西小磯八坂神社前、大磯町消防団第4分団の所在地にあたり、当時は集会所として西小磯地区の住民に頻繁に利用されていました。日誌の記述では「床屋」または「床場」(とこば)と書かれていますが、これは通称で、この当時は床屋ではなかったようです。(『大磯の今昔』(二)より)
更新日:2021年10月07日