大正9年9月9日
9月9日(木曜日)、午前7時35分出勤。
相変わらず戸籍謄抄本に忙殺。
チフス患者が1人亡くなった。また、南下町からチフス患者が3人発生し、隔離舎へ入院させた。
午後、南下町東光院において、チフスの予防注射を行った。長島主任書記、中西巡視、加藤書記、佐藤給仕たちが参加した。 医師は進藤・曽根田の両氏。
午後2時退庁。
帰宅の途中、石井氏宅を訪問した。
解説
町内でチフスが流行してきています。チフス(原文ではチブス)とは腸チフスのことで、菌で汚染された飲み水や食物、排泄物などから経口感染します。当時は糞尿を肥料として使うのは当たり前、上下水道の整備が行き届いておらず、病原菌を媒介するハエやネズミなどの駆除も十分ではなかったため、度々流行が起こり死者も多く出ていました。
一方で、免疫学の進歩により予防のためのワクチン製造が可能になり、予防接種が普及し始めたのがこの頃です。町でも当時最先端の医療である、集団予防接種が行われたことが、この日誌からわかります。
接種の会場は、現在も南下町にある真言宗寺院東光院となっています。当時は下町での患者発生が多かったこと、大勢の住民を集める広さがあることが、会場として使われた主な理由だったと思われます。
更新日:2020年09月09日