文学に描かれた生活の道具「トースター」

更新日:2018年11月16日

当館では、近代以降の生活の道具についても、民俗資料として受け入れを行っています。2018年1月、民俗分野の常設展示替えにともない、定期的に展示替えを行うスペースを増やしました。新しい展示替えスペースでは、しばらくの間、近代以降のちょっと懐かしい道具を紹介していきます。

今月は「文学に描かれた生活の道具」をテーマに展示を行っています。大磯や近隣地域ゆかりの文学作品に描かれた生活の道具を収蔵資料のなかから選び出し、紹介しています。

今回取り上げた作品は、中里恒子『時雨の記』です。この作品に描かれている生活の道具のなかから「トースター」を取り上げました。

トースター

『時雨の記』は、1977(昭和52)年に発表された作品で、1998(平成10)年には映画化もされました。壬生孝之助と堀川多江との中年の恋愛を描いた物語です。主人公のひとりである多恵が「ひきこもって暮」らしている舞台として、大磯が描かれています。その暮らしを象徴するものとして「トースタア」が描かれています。

多江は戦後に出回ったという手動で取り出すトースターを使っています。それを見た壬生は、自動式の新しいトースターをプレゼントして、こんなことを言います。

「古いのは、博物館ゆき……あんたは、買うのを忘れるから、お節介をやいただけよ、次の御注文はなにかな、僕は、新しいもの見たり買ったり、好きなんだ」(中里恒子『時雨の記』より)

今回展示したトースターは、壬生が贈ったような自動式のトースターです。寄贈者が昭和30年代に購入し、使用していたものです。なお、これが当館が所蔵する唯一のトースターであり、壬生が「博物館ゆき」と表現した古いトースターは収蔵していません。

この記事に関するお問い合わせ先

教育委員会 教育部 生涯学習課 郷土資料館
〒255-0005
神奈川県中郡大磯町西小磯446-1
電話番号:0463-61-4700
ファックス:0463-61-4660
メールフォームによるお問い合わせ