令和4年度:施政方針

更新日:2022年02月14日

 町長は、令和4年3月議会初日(2月14日)に令和4年度の町政運営の基本方針及び主要施策について「施政方針」として次のとおり述べました。

はじめに

令和4年度施政方針演説

 令和4年度当初予算案の審議にあたり、町政運営の基本方針及び主要施策について、概要を説明します。私の所信を述べ、提案理由とします。
 私が町長に就任したのは、平成22年12月15日でした。それからは、町民の皆さんのご期待に応えるべく、重責を感じながら、一歩ずつ、前に進み続けた11年間であります。町民の皆さんのご理解と、多くのお力添えをいただきながら、これまで積み上げてきた取組みを継続性と一貫性を持って進め、町民の皆さんとの間に築き上げてきた「信頼とつながり」を何よりも大切にし、誰もが安全で安心に、生き生きと暮らせるまちづくりをめざしてまいりました。
 令和3年度は、令和2年初頭から顕在化した新型コロナウイルス感染症のパンデミックが社会秩序・経済活動・文化、そして人々の価値や生活のありようにまで大きく影響するなか、世界中の人々が新型コロナワクチンを手掛かりに、変異株とも戦いながら、何とか日常生活を取り戻そうと取り組んできた1年でありました。
 本町としても令和2年初頭からの約2年間、町民の皆さんの安全・安心を第一に考え取組みを進めてまいりました。令和3年5月からは、中郡医師会や平塚中郡薬剤師会をはじめ、大磯町からの依頼に対し快く応じていただきました町内外の医療関係者の方々にもご協力いただきながら、新型コロナワクチンの集団接種・個別接種を実施してまいりました。
 コロナ禍という誰もが経験したことのない中で迎える初めての作業でしたが、町民の皆さんがワクチンの接種を冷静に受け入れ、沈着に行動いただけたことにより、大きな混乱もなく無事に実施することができました。改めて感謝申し上げます。
 一方、こうした新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、令和3年度は、多くの事業の実施を見送らざるを得ませんでしたが、第五次総合計画前期基本計画の初年度として、目標に掲げる「人口減少・少子・超高齢社会への適応」と「定住人口の安定化」に向けた取組みを着実に進めてまいりました。
 例えば、子育て分野においては、町内保育所等において、一定期間就労した保育士を支援する「保育士就労支援交付金制度」により、保育士の確保と保育の質の向上を図るとともに、赤ちゃんに関する総合相談窓口である「いそさぽ赤ちゃん相談室」の実施など、様々な保育ニーズに合わせた子育て支援施策を展開してまいりました。
 教育の分野に関しては、国の「GIGAスクール構想」の推進により、令和3年4月には児童生徒一人に一台のタブレット端末を配布いたしました。これら情報通信技術(ICT)を活用したデジタル教育を推し進め、コロナ禍における新たな生活様式に対応した教育と、多様な個性を持つ子どもたちを誰一人取り残さない、個別に最適化された学びを実現できる体制を整えてまいりました。
 また、令和3年4月には、大磯港に整備を進めてまいりました「大磯港賑わい交流施設 OISO CONNECT」がオープンいたしました。コロナ禍においても1月末時点では延べ8万3千人もの方にお越しいただいており、新たな交流の拠点となりました。
 「明治記念大磯邸園」の整備事業においては、令和3年6月に西園寺公望別邸跡・旧池田成彬邸エリアの町公園部分などの用地を取得するとともに、陸奥宗光別邸跡・旧古河別邸エリアの特別緑地保全地区の整備工事を行うなど、国や県と連携した取組みを進めました。
 新型コロナウイルス感染症対策に主眼を置きながらも、本町に住む子どもから高齢者まで、すべての世代の方々をしっかりと社会で支えることができる仕組みや、あらゆる世代が集い、誰もが生き生きと安心して暮らせるまちづくりを着実に推し進めた1年でした。
 さて、国内の社会経済情勢に目を向けますと、内閣府が発表した7月から9月までのGDP(国内総生産)の速報値では、実質成長率が前期比で0.9%減、年率換算で3.6%の減となり、実質成長率は2期ぶりのマイナス成長となりました。これは、7月から9月にかけての夏場における新型コロナウイルス感染症の爆発的な感染拡大によるものとみられています。緊急事態宣言が解除された10月以降は、消費が持ち直した場面もありましたが、年明けから爆発的に拡大したオミクロン株により、再び社会・経済活動が制約されることとなりました。今後の先行きは不透明と言わざるを得ません。
 また、少子・超高齢化の影響により、引き続き社会保障費は増加してまいります。新型コロナウイルス感染症による影響を差し引いても、今後も厳しい財政状況が続いていくものと予測しています。
 一方、令和2年国勢調査の結果によれば、平成27年度から令和2年度までの5年間に、我が国全体で約94万人もの人口が減少する中、本町における同期間の人口推移は、84人の増加という結果でありました。本町がこれまで取り組んできた、魅力あるまちづくりにむけた様々な政策も、こうした人口の推移に貢献したものと考えており、同じく努力いただいた町民の皆さんのご協力あってのものと考えています。
 しかしながら、日本全体の人口減少に伴い、長期的に本町の人口も減っていくことは避けられないものと想定されています。引き続きこの課題に的確に対応できる町を創り上げることで、少しでも人口減少を抑制していく必要があります。町民の皆さん一人ひとりがこの大磯町を舞台として自分に合った快適な生活、「あなただけの大磯らしいライフスタイル」を実現してもらえるよう、町民の皆さんの協力もいただきながら、町の発展に向け持続可能な行政運営に力を注ぐ決意のもと令和4年度予算を編成しました。

令和4年度予算案

 令和4年度・当初予算案の概略を説明します。
 一般会計の当初予算額は100億9,200万円で、前年度予算額106億9,300万円と比べ、5.6%の減となります。
 歳入面での主な増減要因ですが、まず町民税の新型コロナウイルス感染症の影響からの回復を見込み、町税全体として、前年度比で約6,300万円の増としています。
 地方交付税は、近年の交付実績を踏まえ、社会保障関連経費や、デジタル化推進などの需要額の増を見込み、2億8,000万円の増としました。
 国庫支出金は、「明治記念大磯邸園」の整備費などの減により、約2億8,700万円の減となります。
 町債は、「明治記念大磯邸園」整備事業の減、また、地方交付税の増に伴う臨時財政対策債の減により、約8億1,300万円の減となります。
 次に、歳出面での主な増減要因についてです。
 障がい者支援や、幼児教育保育に係る経費などの増により、扶助費が約5,400万円の増、情報化推進に係る経費や、国府小学校の給食調理業務委託の開始などにより、物件費が約1億300万円の増、また、中学校昼食支援補助金などにより、補助費等が約4,000万円の増となります。
 一方、普通建設事業費は、役場新庁舎の整備や、大磯駅周辺整備による増はあるものの、「明治記念大磯邸園」整備事業で用地取得等が完了したことから、約7億1,900万円の大幅減となります。

 次に、特別会計の当初予算額についてです。
 国民健康保険事業特別会計、後期高齢者医療特別会計、介護保険事業特別会計の3特別会計の合計が77億1,600万円で、前年度比1.5%の減、また、一般会計から特別会計への繰出金は、約11億8,300万円で、前年度比1.3%の減となります。

 各特別会計を個別にご説明いたします。
 国民健康保険事業特別会計の当初予算額は34億6,900万円で、前年度予算額35億9,200万円と比べて3.4%の減です。
 歳入面では、被保険者数の減少により、国民健康保険税は前年度比2.7%の減となります。
 歳出面では、歳入面と同様の要因により、保険給付費が前年度比4.7%の減となります。
 一般会計からは、約2億2,500万円を繰り入れます。

 後期高齢者医療特別会計の当初予算額は11億200万円で、前年度予算額10億6,600万円と比べて3.4%の増です。
 歳入面では、被保険者数の増により、後期高齢者医療保険料が前年度比9.3%の増となります。
 歳出面では、保険給付費等の増により、後期高齢者医療広域連合納付金が前年度比3.3%の増となります。
 一般会計からは、約4億6,300万円を繰り入れます。

 介護保険事業特別会計の当初予算額は31億4,500万円で、前年度予算額31億7,200万円と比べて0.9%の減です。
 歳入面では、被保険者数の増などにより、介護保険料が前年度比4.9%の増となります。
 歳出面では、介護サービス利用などの減を見込み、保険給付費が前年度比0.8%の減となります。
 一般会計からは、約4億9,500万円を繰り入れます。

 企業会計を適用している下水道事業会計の当初予算額は、下水を処理するための収益的収入は、9億4,983万3千円で前年度比2.8%の減、収益的支出は、8億7,898万8千円で前年度比3.6%の減、また、下水道施設などを整備するための資本的収入は、14億5,429万3千円で前年度比9.4%の増、資本的支出は、17億5,449万7千円で前年度比8.0%の増となります。
 一般会計からは、約5億4,100万円を繰り入れます。

 次に、この予算編成における令和4年度の主要施策についてご説明します。

令和4年度の重点的取組み

 私は町長就任当初から「観光立町」を強調してまいりました。この「観光」という言葉には、一般的にイメージする意味とは異なり「光を観る」という意味を込めています。
 大磯町の多くの光である地域のもつ魅力に磨きをかけ、「将来を観る」、すなわち将来を展望していかなければなりません。コロナ禍ではありますが、多くの方に大磯町へ来訪していただき、大磯の豊かな歴史・文化や自然、落ち着いた町の雰囲気、そして穏やかで心優しい人々など、町の持つ多面的な魅力に触れることで、大磯町に住んでみたいと思ってもらえるように、また、教育・福祉等にも力を入れることでいつまでも大磯に住み続けたいと思っていただけるような取組みを進めてまいります。
 本町には、これまで先人が守り遺してくれた美しい自然と由緒ある歴史、文化があります。大磯を愛し、誇りを持っていただけるよう、その価値をさらに磨き、高めながら、住みよい大磯を創り上げていく所存です。
 そこで、令和4年度は、これまでも重点的に取り組んできた「5つの政策分野」に引き続き力を注いでまいります。具体的には、子どもたちを安心して育てられる町にするための「子育て」と「教育」への取組み、誰もが生き生きと暮らせるための「健康」への取組み、そして、活気と賑わいを生み出す「観光」や「農業」などの「経済」への取組み、そして、災害に強く人々が心安らかな日常生活を送ることが出来る「安全・安心」の取組みです。
 今年度はこれらに、デジタル技術を活用した行政システムの改革をめざす「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の取組みを加えた「5+1」の政策分野に重点的に取り組んでまいります。
 こうした政策群を一気に進め、町に好循環を呼び込むことで、町の魅力を高め、大磯町に住んでみたい、住み続けたいと願う人の輪を広げていくことが、町の活力へとつながると信じています。

 それでは、これら「5+1」の重点的な取組みごとの主な施策について述べます。

 1つ目の政策分野「子育て」についてです。
 これまで、本町では町民の皆さんが生き生きと子育てができるよう、妊娠・出産・子育てへとつながる切れ目ない支援体制を整備してまいりました。
 引き続き「子育てで選ばれる町」をめざし、多様なニーズに対応した様々な取組みを進めてまいります。
 町立保育園においては、園からのお便りや欠席、緊急時の連絡などを行う「連絡機能」と、登園やお迎えの時間を記録する「管理機能」等をもつ保育アプリの導入を進めてまいります。ICT化を進めることで、保護者の方々の利便性の向上を図るとともに、保育現場の業務負担を軽減させ、子どもたちと向き合う時間をさらに増やしてまいります。
 また、子育てに対して不安を抱える家庭や、支援の必要な家庭に対して、養育支援訪問員が指導・助言等を行う「養育支援訪問事業」を拡充し、育児や家事支援ヘルパー訪問を新たに加えることで、安心して子育てができる環境の充実に努めてまいります。
 「産後ケア事業」につきましては、家族等の援助が受けられない状況にあり、育児に不安を抱えている出産後1年未満の母子を対象に助産師等が育児に関する指導・相談を行ってまいりました。令和4年度については、特に利用の多い、施設への通い型と家庭への訪問型の予算を拡充してまいります。
 そして、待機児童対策としては、令和6年度に公私連携幼保連携型認定こども園への移行をめざしている大磯幼稚園につきまして、様々な方々からのご意見をいただくとともに、保護者の方々に対し、丁寧に説明を行ってまいります。また、家庭的保育事業の実施や預かり保育を拡充することで、移行までの保育ニーズに応えてまいります。
 また、令和元年10月に始まった幼児教育・保育の無償化ですが、施設の区分や保育の必要性などにより、無償化の対象とならない方々から制度の改善要望が寄せられていました。そこで、町として対象を拡大することで、独自の支援を実施してまいります。

 次に、2つ目の政策分野「教育」についてです。
 これまで、導入に向け研究を進めてまいりました「学校運営協議会制度」いわゆるコミュニティ・スクールですが、いよいよ令和4年度から、全ての町立幼稚園・小学校・中学校に設置いたします。地域の皆さんのお力をお借りし、地域とともにある学校の構築をめざしてまいります。
 また、「GIGAスクール構想」により、1人に1台のタブレット端末を配備し、ICTを活用した学習環境の一層の向上を推進しています。ICT支援体制の強化や教職員への研修を通し、オンライン授業に対応できる環境整備に努め、デジタル教育の向上をめざしてまいります。
 そして、子どもたちの「こころ」にも向き合ってまいります。手や足を骨折した時にはギプスはつけられますが、心が傷つき折れてしまった時にギプスはつけられません。子どもたちの「いのち」そして「こころ」が傷つくことを防ぐため、生活面や学習面で発達的・心理的・情緒的な問題を抱えている子どもたちに対する支援を行うためスクールソーシャルワーカーなどの専門職の配置を充実させ、教育相談体制の強化を推進します。
 あわせて、子どもたちと先生が向き合える時間を増やしていけるよう「教員の働き方改革」として教職員の業務効率の向上を目的にICT化の検討を進めてまいります。
 また、教育大綱にのっとり、教育ビジョンを策定するとともに、安全安心な学校施設環境整備を推進するため、「大磯町教育施設等長寿命化計画」に基づき、教育施設整備に向けた基本的な考え方をまとめた基本構想を策定し、計画的な学校施設の整備点検・修繕を実施してまいります。また、特に夏季に高温となる小学校給食調理場の環境改善を図るため、空調設備を整備してまいります。
 そして、「中学校給食」についても新たな取組みを進めてまいります。中学校給食の休止に伴い、お弁当を持参することが難しい生徒に対して、令和3年9月から希望注文制のお弁当を提供しています。
 令和4年度は、これに加え、コロナ禍における保護者負担の軽減のため、町立中学校全生徒に対し、昼食費の補助を実施いたします。
 生涯学習の分野でも新たな取組みを進めます。
 まず、平成29年4月に開館した旧吉田茂邸が、開館5周年を迎えることから、旧吉田茂邸に関する資料を活用した、ここでしか手に入らない関連製品を作成し、更なる魅力の向上を図ってまいります。
 さらに、青少年教育の取組みとして、決断の場であった旧吉田茂邸を活用し、中学生を対象とした大磯らしい、大磯でしかできない、『将来の大磯町を語り合う』夏休み体験学習を実施いたします。
 また、図書館では、令和3年度に開設した電子図書館の利用を促進させるとともに、利用者層の拡大と休館時にも対応できる読書機会の確保を図ります。

 続いて、3つ目の政策分野「健康」についてです。
 超高齢社会を迎えている本町にとって、介護予防や健康増進、社会参加などは喫緊の課題です。
 これまで、地域の健康維持と推進をめざして開催してきた「おあしす24健康おおいぞ」につきましては、疾病予防、介護予防、生きがいづくり等のテーマで講座を提供するなど、地域に根差した活動の場として、発展させてまいります。
 さらに、地域の集会所、個人宅、空き家、事業所の空きスペース等において、住民主体で体操、趣味活動、茶話会などを行い、高齢者の誰もが交流できる「通いの場」事業として発展させてまいります。いつまでも住み慣れた地域で楽しく暮らして行けるよう、引き続き町民の皆さんのサポートを行います。
 また、11月には、健康や福祉に関する多彩なイベントを通じ、60歳以上の方々を中心として、健康保持・増進、社会参加、生きがいの高揚等を図り、ふれあいと活力ある長寿社会の形成に寄与するための全国健康福祉祭「ねんりんピックかながわ2022」が、神奈川県で初めて開催されます。本町は、茅ヶ崎市とともにサーフィン競技の会場となります。
 健康であり続けるためには、日々の運動が欠かせません。コロナ禍において皆で運動する機会は少なくなってしまいましたが、チャレンジフェスタに加えて、ねんりんピックをきっかけに、あらためて運動を習慣化することができるよう進めてまいります。
 そして、新型コロナウイルス感染症対策についてです。ワクチンの追加接種についてですが、既に2回目接種日に応じて対象者宛てに順次接種券を送付しており、当初より日程を前倒しし、個別接種は1月24日から、集団接種は2月6日から開始しています。令和4年度においても、1、2回目と同様に中郡医師会や平塚中郡薬剤師会をはじめ、町内外の医療関係者の方々と協力し、着実かつスピーディーに実施してまいります。
 あわせて、外出が困難なお年寄りなどを対象とした訪問接種も継続して実施してまいります。
 また、感染力の強いオミクロン株のまん延により、在宅療養者も増加していますので県と連携した生活支援サービスも進めてまいります。
 なお、先日、東海大学医学部付属大磯病院が来年3月より、医療法人徳洲会に事業継承されることが公表されました。
 町としましては、新病院が引き続き、地域医療の中核としての役割を担って行くよう、学校法人東海大学や医療法人徳洲会に対し要請していくとともに、中郡医師会とも協力し、町民の皆さんが安心して医療を受けられるよう努めてまいります。

 次に、4つ目の政策分野「経済」についてです。
 令和3年4月にオープンいたしました「大磯港賑わい交流施設 OISO CONNECT」を中心に、「大磯らしい潤いづくり協議会」の実施する産品登録制度とも連携し、地場産の農水産物や加工品、町の名産品等を販売することで、施設への誘客をはじめ「農業」、「漁業」、「商工業」の活性化、さらには、みなとオアシスエリアの賑わい創出へとつなげてまいります。特に農産物につきましては、農業者の出品を一層促進してまいります。
 そして、令和3年度からスタートしている「大磯らしい潤いづくり協議会」による、「食べる」、「買う」、「泊まる」といった消費行動へつなげる多様な取組みを支援し、地域経済循環の更なる活性化を図ります。
 また、今後、締結を予定しております群馬県川場村との連携協定において、相互の地場産品の販売や情報提供等の取組みを通じ町に一層の活力と賑わいを生み出します。
 あわせて、令和3年11月に島根県美郷町と締結した「地域活性化に向けた包括的連携に関する協定(ビーチ&バレー協定)」に基づいて美郷町のノウハウやネットワークを活用し、イノシシなど有害鳥獣の捕獲体制の改革を進めるとともに、鳥獣害対策が農業振興及び地域活性化につながる方策を検討し、住民主体・地域ぐるみの鳥獣害対策が無理なく意欲的に継続されるよう、取組みを進めてまいります。
 本町で継続的に推進してまいりました自伐型林業への取組みにつきましては、森林所有者と利用希望者とのマッチングを行うことで、森林の活用や保全に努めてまいります。

 次に、5つ目の政策分野「安全・安心」についてです。
 まず、「地域のつながり事業」についてです。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大による、外出機会や集いの場などの社会参加機会等の減少は、人とのつながりをも奪うことになりました。
 こうした中、ひきこもりやヤングケアラー、認知症、虐待、DV、貧困等の悩みを抱えながらも地域とのつながりが薄く、支援を求める声を上げることができず、周りにも気づかれずに孤立している世帯や個人はますます増えることが予測されます。
 こうした課題に対応するため、専門的な学識経験者が在籍する星槎大学と相互に連携し、協働して事業を進めるための協定を令和3年6月に締結いたしました。今後は地域において孤立している人たちの実態を把握した後、その声を拾いあげるための専門職等による訪問支援などの体制整備を進めてまいります。
 高齢者福祉対応についてもさらに歩を進めてまいります。今後の超高齢社会を見据え、安心して介護サービスを受けることができるよう、町民の皆さんのため、地域密着型介護老人福祉施設の第九期大磯町高齢者福祉計画介護保険事業計画期間中での整備に向け検討を開始いたします。そして、人生の後半に差し掛かったとき、これまでの人生を振り返り、その先の人生を整えるための「終活」を支援する仕組みを進めてまいります。
 また、障がい者福祉では、新たな取組みを進めます。
 横溝千鶴子記念障害福祉センター「すばる」の2階部分の活用方法については、現在、町内の障がい福祉団体や障がい者支援の事業所の皆さんとともに検討しています。障がい福祉に関係する皆さんの知恵やつながりを結集し、施設の新しい使い方を一から練り上げ、実現していくため、民間活力の導入なども含めた検討を進めながら、地域に開かれた施設となるよう取り組んでまいります。
 また、安全・安心なまちづくりには、自然災害への備えが欠かせません。
 令和3年8月に、県から津波災害警戒区域の指定を受けたため、令和4年度には津波避難ビル等の見直しを含め地域防災計画を改定します。そして、避難場所や避難経路などを記載した津波ハザードマップの作成を進めてまいります。
 あわせて、指定避難所でインターネット通信を可能とするWi-Fi環境の整備、ハザードマップや洪水浸水想定区域などの情報を地図情報として視覚的にわかりやすく、いつでも、誰でも情報にアクセスすることができる地理情報システム(GIS)の導入を進めます。さらに、おおいそ防災・行政ナビの機能を拡充し、これらを活用した地域の皆さんとの防災訓練を重ねることで、「自助」「共助」「公助」を円滑に機能させ、安全・安心を実感できる地域を、皆さんとともに築いてまいります。
 また、近年の集中豪雨や台風などによる河川等の浸水対策にも力を注ぎます。
 三沢川は、新たに金目川合流部における逆流防止対策に着手いたします。また、国府新宿地区における雨水管整備を着実に進めるとともに、河川施設の修繕、泥溜めの清掃や除草・樹木の撤去の維持管理を行うことで、流下能力の確保を図ります。
 そして、災害時の拠点となる施設の整備を進めます。
 町役場新庁舎については、令和7年度の利用開始をめざして整備を進めています。町民説明会やパブリックコメント等の意見をもとに、令和3年度末までに「基本構想」の策定が終了する予定です。令和4年度には、隣接する民有地の用地取得を行うとともに、施設整備の具体化に向けた「基本計画・基本設計」の策定作業を進めてまいります。
 消防・救急活動の拠点となる現在の消防庁舎の安全性や機能性を確保することも不可欠な取組みです。そのため、消防庁舎の移転建替及び分署統合の必要性を含めた検討も開始してまいります。そして、各種災害に対応した訓練を実施することで、消防力向上を図るとともに、消防団については、消防団員の処遇改善を行うことで入団を促進していくほか、装備等の充実強化を図ることで、地域防災力の向上を図ります。
 また、安全・安心な道路環境整備を促進してまいります。
 国府新宿森下地区の道路環境整備への着手、通学路の安全対策向上への取組みをはじめ、国府橋周辺の不動川の河川改修や国府橋の架け替え工事、月京地区での県道63号の歩道整備など神奈川県や警察等の関係機関とも連携・協力し、着実に進めてまいります。
 大磯駅前における安全・安心についても、引き続き力を注いでまいります。住民説明会やパブリックコメントでの意見を考慮し、令和3年度には、大磯駅前広場の修正計画を作成いたしました。現在、民有地の用地取得に向けた調査業務を実施しており、令和4年度は、民有地の用地取得を行うとともに、修正計画図に基づき実施設計を行ってまいります。

 次に、「+1(プラスいち)」の政策分野「デジタルトランスフォーメーション(DX)」についてです。
 これまで述べてきた「子育て」、「教育」、「健康」、「経済」、そして、「安全・安心」に向けた取組みのさらなる推進を図るため、デジタル技術を活用しながら、施策や事務事業の変革に取り組んでまいります。
 「町民の利便性の向上」や「町の業務効率化」の取組みを推進させるためには、町行政のデジタルトランスフォーメーションが不可欠です。その一環として本町においても、令和3年12月から、行政手続きにおける押印等の見直しを行いました。今後も社会全体のデジタル化への大きな流れをしっかりと受け止め、行政手続きのオンライン化などの、業務のデジタル化を促進してまいります。
 具体的には、町税等納付のキャッシュレス化を推進し、金融機関窓口に行かずとも納付できる環境を整え、納付者の利便性の向上につなげてまいります。
 また、業務効率化のため、定型的で反復性の高い業務を自動化するための技術(RPA)の導入や職員の在宅勤務環境の整備についても継続して推進してまいります。
 こうした取組みとあわせて、デジタル技術の活用に不安のある皆さんを対象としたスマホ教室の開催など、ICTに馴染んでいただくための対策も継続して実施してまいります。
 デジタル技術を活用することで、いつでもどこにいても、多様な方とつながることができ、まちづくりの裾野を広げていくことが期待できます。こうしたデジタル技術のもつ特性を生かし、政策課題を解決するための方策についても研究してまいります。

 これら「5+1」の重点的取組みのほかにも、次の2つの個別施策には特に力を注いでまいります。
 まず、1点目が明治記念大磯邸園の整備についてです。
 令和4年度は、町文化財指定の4つの建造物の保全活用に向けた建物改修や周辺工事など、国の区域における取組みを中心に行います。町区域は、陸奥宗光別邸跡・旧古河別邸エリアの開園区域を特別緑地保全地区まで拡大してまいります。
 明治記念大磯邸園は、本町の魅力をさらに高め、地域の活性化へとつなげていくための貴重な歴史的資源であり、財産となりますので、令和7年の全面開園に向け、引き続き国や県とも連携を密にし、事業を進めてまいります。
 そして、2点目が「カーボンニュートラル」に向けた取組みです。
 地球温暖化は抜き差しならない段階にまで進行し、今後10年が私たちの未来を決めるとも言われています。
 国は、2030年までに温室効果ガスを2013年比で46%削減し、2050年にカーボンニュートラルをめざすとしています。次代を担う子どもたちに健やかな地球環境を引き継ぐためにも、町としてもこの目標達成をめざした施策を大胆に展開していく必要があります。
 令和4年度に改定する環境基本計画では、これまでの「カーボンニュートラル」から「カーボンネガティブ」へと一歩踏み込んだ視点からの検討を進めます。
 そして、この計画達成に向けた施策群を町民の皆さんと共有し、その実現の途を探り、事業展開につなげていくことで、温暖化対策に地域から貢献してまいります。

むすびに

 以上、私の町政運営に対する所信及び新年度予算の概要について述べました。
 令和3年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、一昨年よりも長い自粛期間など異例の一年間となり、「いつもと違う」という事の難しさ、「いつも通り」という事のありがたみを実感した年となりました。
 新型コロナウイルス感染症は今年に入って、県内でもオミクロン株の市中感染が確認され、新規感染者数も激増し、未だ先行きを見通すことが難しい状況にあります。
 町としては、国や県との連携を深め、国の施策・県の施策を確実に町民や事業者の皆さんへおつなぎすることで、命とくらしを守ってまいります。
 町長として、任期の最終年を迎えるにあたり、町民の皆さんの負託に確実にお応えするために、これまで以上に、町民の皆さんからの意見を聞くとともに、議員各位とも十分に議論を重ねながら、こうした課題を解決していくべく、さらなるスピード感を持って町政を前進させていく所存です。
 これまで私は、町民一人ひとりの顔が見える行政をめざし、心掛けてまいりました。しかしながら、飛沫感染防止のために常時マスクをするような状況になって二年近くになります。文字通り表情が見えづらい時期だからこそ、そのマスクの下で困っていることを見逃さないように、町民の皆さんの顔が見える行政をめざしてまいります。先行きの見えない時代だからこそ、将来に希望を持つことができるように、現在の足元をしっかりと固めて、進めてまいります。
 「子育て」、「教育」、「健康」、「経済」、「安全・安心」、そして、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という「5+1」の取組みを通じて、「大磯に住みたい、住み働きたい、いつまでも住み続けたい」という人の輪をさらに広げ、「誰もが安全で安心に、生き生きと暮らせるまちづくり」に向け、また、新型コロナウイルス感染症という難局にも打ち勝ち、乗り越えるためにも、皆さんとの信頼とつながりによって創り上げてきた「志」を、次世代に引き継いでいくため、これまで積み重ねてきた取組みを礎とし、より発展させていく、「創始継志」を胸に町政運営に臨んでまいります。
 町民の皆さん、議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げまして、令和4年度の施政方針といたします。

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